尋常性乾癬
尋常性乾癬は、皮膚に赤い発疹と銀白色のかさぶたのようなフケ(鱗屑)が繰り返し出てくる慢性の皮膚病です。国内における有病率は1000人中1~2人くらいと言われています。感染症ではないため、人にうつる心配はありません。かゆみを伴うこともあり、見た目の変化から悩むことも多く、QOL(生活の質)に影響し、患者さんを苦しめる病気です。だからこそ、私たちは患者さんの声に耳を傾け、最適な治療法を一緒に探していくことを大切にしています。当院では行えない治療もありますので、総合病院への紹介も可能です。
尋常性乾癬の症状について
尋常性乾癬の主な症状は、以下のとおりです。
- 皮膚の赤み・・炎症によって皮膚が赤くなります。
- 盛り上がり(局面)・・皮膚が少し盛り上がって、厚みを帯びることがあります。
- 鱗屑(りんせつ)・・皮膚の表面に、銀白色のかさぶたのようなものが付着します。これがポロポロと剥がれ落ちることがあります。
- かゆみ・・多くの場合、皮疹にかゆみを伴います。
- 爪の変化・・爪が厚くなったり、変形したり、小さな凹みができたりすることがあります。
これらの症状は、全身のさまざまな部位に現れる可能性がありますが、特に肘、膝、頭皮、腰などに多く見られます。症状の程度や現れ方は人それぞれ異なり、軽度で自覚症状がない場合もあれば、重度で日常生活に支障をきたす場合もあります。
尋常性乾癬の原因について
尋常性乾癬の正確な原因はまだ解明されていませんが、遺伝的な要因と環境的な要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
- 遺伝的要因・・乾癬になりやすい体質は、遺伝によって受け継がれることがあります。ただし、遺伝的な素因があるからといって、必ず発症するわけではありません。
- 免疫システムの異常・・自己免疫の反応により、皮膚のターンオーバーが異常に早くなります。T細胞と呼ばれる免疫細胞が過剰に活性化し、炎症を引き起こすことがわかっています。
- 環境的要因・・
- 感染症・・溶連菌感染症などがきっかけで発症・悪化することがあります。
- ストレス・・精神的なストレスが症状を悪化させることがあります。
- 外傷・・皮膚への刺激(摩擦、圧迫、傷など)がきっかけで、その部位に皮疹が出ることがあります(ケブネル現象)。
- 特定の薬剤・・一部の薬剤が乾癬を悪化させることがあります。
- 生活習慣・・喫煙、飲酒、肥満(メタボリック症候群)なども悪化要因とされています。
尋常性乾癬の治療法について
尋常性乾癬の治療は、症状の程度やタイプ、患者さんのライフスタイルなどを考慮して、総合的に判断されます。治療の目標は、症状をコントロールし、QOLを向上させることです。
- 外用療法・・
- ステロイド外用薬・・炎症を抑え、かゆみを和らげる効果があります。
- 活性型ビタミンD3外用薬・・皮膚の細胞の増殖を抑え、鱗屑を改善する効果があります。
- 保湿剤・・皮膚の乾燥を防ぎ、バリア機能を改善する効果があります。
- 光線療法(紫外線療法)・・当院では行っていません。
- PUVA療法・・ソラレンという薬を服用または外用し、UVA(長波長紫外線)を照射する方法です。
- ナローバンドUVB療法・・特定の波長のUVB(中波長紫外線)を照射する方法です。PUVA療法に比べて副作用が少ないとされています。
- 内服療法・・
- ビタミンA誘導体・・皮膚の細胞の増殖を抑え、炎症を改善する効果があります。
- 免疫抑制剤・・免疫システムの働きを抑え、炎症を鎮める効果があります。
- PDE4阻害剤・・炎症に関わるPDE4という酵素の働きを抑え、炎症反応を抑制する効果があります。
- 生物学的製剤・・当院では行っていません。
- 特定の免疫物質の働きを抑える注射薬です。既存の治療法で効果が不十分な場合に検討されます。
